AIでなくならない仕事
Day10:営業職 ― 「人から買いたい」と思わせる存在

はじめに
近年はECサイトやAIチャットボットが普及し、商品やサービスの購入プロセスの多くが自動化されています。AIは顧客の購買データを分析し、「この人にはこの商品が合う」と的確にレコメンドできます。しかし、それでも営業職がなくならないのはなぜでしょうか。それは、人間同士のやりとりにしか生まれない「信頼」と「感情のつながり」が、購買の大きな要因となっているからです。
AI営業の強みと限界
AIは顧客の購買履歴や行動データを分析し、効果的なタイミングで提案を行うのが得意です。すでにネット通販やサブスクリプション型サービスでは、この仕組みが大いに活用されています。
しかし、営業の現場では「なぜその商品を選ぶのか」という合理性だけでなく、「この人から買いたい」という感情的な要素が大きく影響します。顧客は単なるモノやサービスを買うのではなく、「信頼できる人から買う」ことに価値を感じているのです。
営業職が発揮する人間的な力
- 信頼関係の構築
定期的な訪問やコミュニケーションを通じて顧客との絆を深める。 - 相手に合わせた臨機応変な提案
顧客の状況や表情を読み取り、その場に最適な提案を行う。 - 不安を和らげる存在
高額商品や長期契約では「最後の一押し」として安心感を与える。 - アフターフォロー
購入後のサポートを通じて「人としての信頼」を積み重ねる。
これらの要素はアルゴリズムだけでは実現できず、人間ならではの強みです。
「人から買いたい」と思わせる要素
顧客が営業担当者を信頼する理由は、誠実さや親身さにあります。
- 誠実な対応:メリットだけでなくデメリットも伝えることで信頼を獲得。
- 共感力:顧客の立場に立って悩みや不安を理解する姿勢。
- 専門性:知識と経験をもとにした確かな提案力。
AIは商品データを示せても、「人間として信頼される」ことはできません。ここに営業職の存在意義があります。
まとめ
営業職は単なる商品販売ではなく、「人から買いたい」と思わせる存在になることが本質です。AIがデータを解析し効率を高める一方で、最終的に顧客の心を動かすのは人間の誠実さや共感力です。だからこそ営業職はAI時代にもなくならない仕事の代表格と言えるでしょう。
次回は「Day11:交渉人 ― 空気を読むスキルの価値」を取り上げます。
出典
- Dixon, Matthew & Brent Adamson. The Challenger Sale (Portfolio, 2011)
- 経済産業省「営業職の役割とスキルに関する調査報告書」(2020年)