AIでなくならない仕事
Day17:作家・小説家 ― 物語の力は人間だからこそ

はじめに
AIが小説を自動生成する時代が到来しました。大量のデータを学習したAIは、文法的に正しく、ストーリー展開も整った文章を作成できます。しかし、小説や物語の価値は「きれいな文章」や「筋の通った構成」だけではありません。そこに込められる作家自身の体験、感情、哲学が、人々の心を動かすのです。
AIが作る物語の特徴と限界
AI小説は、過去の名作や人気作品のパターンを学習して生成されます。そのため、一定の完成度を持ちながらも「どこか既視感がある」「型にはまっている」と感じられることが少なくありません。
一方で、人間の作家が生み出す物語には、個人的な経験や感情、時には矛盾や不完全さが含まれます。これらが逆に「リアリティ」や「深み」となり、読者の心を揺さぶります。
作家・小説家の役割
- 人間の経験を物語に昇華する
戦争や貧困、愛や喪失など、個人の体験を普遍的な物語に変える。 - 社会を映し出す
小説はその時代の価値観や課題を反映し、後世に伝える役割を持つ。 - 読者に共感と気づきを与える
物語を通じて「自分も同じだ」と感じたり、「こう生きたい」と思わせたりする。 - 想像力を広げる
架空の世界を描くことで、現実では得られない視点や体験を読者に提供する。
これらは単なる言葉の組み合わせではなく、作家自身の人生や感性からしか生まれません。
なぜ物語は人間にしか書けないのか
物語は「人間が生きることそのもの」に根ざしています。失恋の痛み、親子の絆、社会の矛盾など、作家が生きて感じたことが文章に滲み出ます。読者が小説に心を動かされるのは、文章そのものではなく「その背後にある人間の心」に触れるからです。AIには、この「生きることの実感」を表現することができません。
まとめ
作家や小説家の仕事は、単に物語を組み立てることではなく、「人間の体験を普遍的な物語にする」ことです。AIが技術的に優れた小説を生成できても、そこに「人間の魂」を込めることはできません。だからこそ、小説家はAI時代にもなくならない仕事であり続けるのです。
次回は「Day18:デザイナー ― 感覚と流行をつかむ仕事」を取り上げます。
出典
- Kundera, Milan. The Art of the Novel (Grove Press, 2005)
- 日本文藝家協会「小説と社会の関わりに関する調査報告書」(2021年)
