Day3:感情を動かすコピーライティング

ユーザー心理から見る広告作成術

Day3:感情を動かすコピーライティング

広告の中心にあるのは「コピー(言葉)」です。デザインやビジュアルがどれほど洗練されていても、コピーが弱ければ消費者の心は動きません。逆に、シンプルな広告であっても、心に響く言葉が添えられていれば人は思わず足を止め、行動を起こします。つまり、コピーは広告の「心臓部」であり、最も強力な武器なのです。

感情に訴えるコピーの力

人は理性的に買い物をしているように見えて、実際には大半の購買行動が感情によって決まっています。行動経済学者ダニエル・カーネマンの研究によれば、人間は「直感システム(システム1)」に大きく依存して判断しており、瞬間的な感情や連想が意思決定を左右します(Kahneman, Thinking, Fast and Slow, 2011)。そのため、広告コピーは「情報」以上に「感情」を刺激する必要があるのです。

例えば、「あなた」「今だけ」「簡単」「無料」といった言葉は、私たちの注意を引き、行動を促す強いトリガーになります。「自分ごと」として感じさせ、「希少性」や「お得感」を喚起する力があるからです。

特徴よりベネフィットを語る

コピーライティングでよくある失敗は「商品の説明」に終始してしまうことです。たとえば「このサプリには◯◯成分が入っています」というのは単なる特徴に過ぎません。消費者は「その特徴が自分の生活にどう役立つのか」を知りたいのです。

そのためには「ベネフィット(得られる未来)」を提示することが重要です。
例:

  • NGコピー:「このサプリにはビタミンB群が豊富に含まれています」
  • OKコピー:「翌朝すっきり目覚めて、1日中集中できる毎日を手に入れませんか?」

後者は、商品の機能を超えて「体験できる未来」を描いており、感情に訴えかける力を持っています。

ストーリーテリングの効果

人はストーリーに心を動かされやすい存在です。広告コピーでも「ストーリーテリング」を活用することで説得力が大きく増します。典型的なのが「BABの法則(Before→After→Bridge)」です。

  • Before:悩みや課題を提示(例:「朝起きても疲れが取れない…」)
  • After:理想の未来を描く(例:「毎朝爽快に目覚め、仕事も勉強も集中できる」)
  • Bridge:その橋渡しを商品で示す(例:「そのために開発されたのが、このサプリです」)

この流れに沿うだけで、読み手は自然に共感し、自分の未来に商品を結びつけやすくなります。

コピーは感情を動かす武器

結局のところ、広告コピーは「心を動かして行動を促す言葉」です。理屈や説明だけでは人は動きません。コピーの力で「これは自分に必要だ」「今すぐ欲しい」と感じてもらうことこそが広告のゴールなのです。

👉 学びのポイント

  • コピーは感情を動かす武器である
  • 「特徴」ではなく「ベネフィット」を語る
  • ストーリーで共感を引き出すと説得力が増す

📚 出典・参考文献

  • ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』早川書房, 2012年(原著 Thinking, Fast and Slow, 2011)
  • ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器』誠信書房, 2014年
  • ジム・エドワーズ『コピーライティングの心理技術』ダイレクト出版, 2021年