Day9:オンライン広告とクリック心理

ユーザー心理から見る広告作成術

Day9:オンライン広告とクリック心理

現代の広告の中心は、テレビや紙媒体ではなくオンラインに移行しています。
Googleの検索結果に表示されるリスティング広告、Webサイトに表示されるバナー広告、そしてInstagramやX(旧Twitter)、YouTubeなどのSNS広告まで、私たちは日常的に数十〜数百の広告に接触しています。

しかし、そのすべてをクリックするわけではありません。むしろ大多数はスルーされ、ユーザーの指先を動かす広告はごく一部です。では、人はどのような心理で広告をクリックするのでしょうか?


クリック心理の基本パターン

  1. 関連性の高さ
    ユーザーが「今」求めている情報や関心に合致した広告は、クリック率(CTR)が高くなります。たとえば旅行を検索している人に「格安航空券セール」の広告が出れば、自然と目に留まります。Google広告の公式データでも、検索意図と広告が一致するほどクリック率は飛躍的に高まるとされています(Google Ads, 2022)。
  2. 緊急性・限定性
    「本日限定」「あと3時間で終了」などのコピーは、心理学でいう「損失回避バイアス」を刺激します。人は利益を得る喜びよりも、損を避ける感情のほうが強いため、今行動しないと「失う」と思わせる訴求は有効です。
  3. 好奇心ギャップ
    「99%の人が知らない方法」「知っておきたい意外な真実」といったコピーは、情報の一部を伏せることで続きを知りたいという欲求を生みます。これはジャーナリストのジョージ・ローブが提唱した「情報ギャップ理論」に基づいており、BuzzFeedなどのメディアでも多用される手法です。

数値で見えるオンライン広告の強み

従来のテレビCMや新聞広告では「どれだけ見られたか」「どれくらい行動につながったか」を正確に把握することは困難でした。
一方、オンライン広告は インプレッション数(表示回数)、クリック率(CTR)、コンバージョン率(CVR) などが明確に計測できます。

この「数値で効果検証ができる」という特性が、広告改善のサイクルを高速化させています。
例えば「Aのコピー」と「Bのコピー」でどちらがクリックされやすいかを比較する A/Bテスト を行い、反応の良いものに予算を集中させるといった戦略が可能です。


信頼を失わないための注意点

ただし、緊急性や好奇心ギャップを過度に使いすぎると「クリック詐欺」「釣り広告」と受け取られ、ブランドイメージを損なうリスクもあります。
一度失った信頼を取り戻すのは非常に難しいため、広告の心理効果は ユーザーに価値ある情報を届ける目的 で使うことが欠かせません。

健全な広告運用とは、「ユーザーに役立つ情報をいかに魅力的に見せるか」という視点を忘れないことです。


学びのポイント

  • クリックを生む三大要素は 関連性+緊急性+好奇心
  • オンライン広告は数値で検証でき、改善の余地が大きい
  • 過剰表現は信頼を損なうため「価値ある情報の見せ方」を意識する

オンライン広告は単なる「クリック集め」ではなく、ユーザーの課題を解決する入口であるべきです。心理学とデータ分析をバランスよく活用することが、広告効果を最大化する鍵となります。


出典参考

  • Kahneman, D. (2011). Thinking, Fast and Slow. Farrar, Straus and Giroux.(損失回避バイアスの研究)
  • Google Ads ヘルプ「クリック率(CTR)の改善」(2022)
  • Loewenstein, G. (1994). The psychology of curiosity: A review and reinterpretation. Psychological Bulletin.(情報ギャップ理論)