Day13:ペルソナ設計― 広告の方向性を定める最初の一歩

ユーザー心理から見る広告作成術

Day13:ペルソナ設計― 広告の方向性を定める最初の一歩

広告やマーケティングで成果を上げるために、最初に考えるべきことは「誰に向けて発信するのか」という問いです。どれほど魅力的なコピーやデザインを作っても、届けたい相手が曖昧であれば効果は半減してしまいます。ここで役立つのが「ペルソナ設計」という手法です。

ペルソナとは?

ペルソナとは、商品やサービスを利用する典型的な顧客像を、実在する人物のように具体的に描いたものです。単なる「20代女性」「会社員」といった断片的な属性ではなく、年齢、性別、職業、家族構成、価値観、生活習慣、メディア利用傾向、抱えている悩みなどを細かく設定します。

たとえば化粧品の広告を考える場合、ターゲットを「30代女性」とだけ定義するのは不十分です。
より踏み込んで「30代前半、フルタイム勤務で小学生の子どもがいる。最近、肌の乾燥や小じわが気になり始めているが、忙しくてスキンケアに時間をかけられない。SNSで話題の商品には敏感で、口コミを参考に購入することが多い」といった具合に描きます。

ここまで明確にすると、「保湿力が高く、時短で使えるスキンケアアイテム」という訴求軸が浮かび上がり、コピーやビジュアルも自然と方向性が定まります。

ペルソナ設計のメリット

ペルソナを設計することで、広告づくりのブレがなくなります。ターゲット像が曖昧だと「誰にでも響くように」とメッセージが広く浅くなり、結果的に誰の心にも刺さらない広告になりがちです。

一方でペルソナを設定すれば「その人が抱えている悩みにどう応えるか」「どのような言葉を選ぶと響くか」が明確になります。実際に多くの企業がこの手法を取り入れ、広告やプロモーション施策の一貫性を高めています【出典:Adele Revella『Buyer Personas』, Wiley, 2015】。

ペルソナ設計のポイント

  1. データを基盤にする
     思い込みではなく、アンケートやインタビュー、アクセス解析などの実データをもとに作成することが重要です。
  2. 複数のペルソナを描く
     1つの商品に対して複数の利用シーンがある場合、2〜3人のペルソナを設定することで、広告の幅が広がります。
  3. 定期的に見直す
     顧客の価値観やトレンドは変化します。年単位で見直しを行い、常に現実の顧客像と乖離しないよう調整することが求められます。

ペルソナと広告表現

ペルソナを設定すると、コピーやデザインの具体化が容易になります。例えば先ほどの30代女性をペルソナとするなら、キャッチコピーは「忙しいあなたに、1分で潤う朝のスキンケア」といった形で生活文脈を反映できます。ビジュアルも「働く母親が朝の短時間でスキンケアしている様子」など、共感を呼ぶ表現にしやすいのです。

まとめ

ペルソナ設計は、広告制作における羅針盤のような存在です。具体的な人物像を描くことで、広告は「誰に向けて何を伝えるか」が明確になり、より強い説得力を持つようになります。

👉 学びのポイント

  • 誰に向けた広告かを明確にするのが最優先
  • ペルソナを具体的に描くとメッセージがぶれない
  • 実データを反映し、定期的に更新することで有効性が高まる

参考

📚 書籍・研究

  • Adele Revella (2015). Buyer Personas. Wiley.
     ペルソナ設計の体系的な方法論を示した代表的な書籍。BtoB/BtoCマーケティング双方での活用事例が豊富です。
  • Philip Kotler 他 (2017). Marketing Management, 15th ed. Pearson.
     マーケティングの教科書的存在。STP(Segmentation, Targeting, Positioning)理論を通じて、ターゲット設定や顧客像の重要性を解説。
  • HubSpot Blog – “What is a Buyer Persona?” (2023)
     実務に直結するペルソナの作成方法を紹介。無料テンプレートなども公開されており、実際の広告運用に役立ちます。
  • 日本国内の参考
     経済産業省「消費者行動研究」や、電通総研のマーケティング調査レポートも「ターゲット設定と消費者心理」の関係を分析しています。

📑 学術的背景

  • 社会心理学の観点:「自分と似た人の行動や意見に共感・影響されやすい」という社会的証明の心理(Cialdini, Influence)。
  • 広告実務の観点:特定の「誰か」に語りかけることで、メッセージが具体化し「刺さりやすくなる」ことが多くの実証研究で示されています。