最初は謎だよね!よく聞くビジネス用語
Day26:エンパワーメント ― 自発的に動くチームをつくる
「エンパワーメント(Empowerment)」という言葉は、最近よく耳にするようになりました。
「チームをエンパワーする」「社員をエンパワーする」といった形で使われますが、
具体的に何を意味するのか、いまひとつ分かりづらい用語でもあります。
エンパワーメントとは、メンバー一人ひとりが自発的に考え、行動できるように力を引き出すこと。
つまり、「命令して動かす」マネジメントではなく、「信頼して任せる」リーダーシップの形です。

🔹 エンパワーメントの語源と考え方
“Empower” は「力を与える」という意味の英語です。
ビジネスで使う場合、「上司が部下に権限と責任を委ね、主体的に動ける環境をつくる」ことを指します。
たとえば――
- メンバーが自ら提案して改善を進める
- 上司が判断を一任し、成功も失敗も受け止める
- 現場が自律的に動ける仕組みを整える
このようなチームでは、上司の指示を待つのではなく、全員が“当事者”として行動します。
🔹 なぜ今、エンパワーメントが注目されているのか
従来の組織では「上司が決めて、部下が動く」という構造が一般的でした。
しかし、変化が激しい現代のビジネスでは、上からの指示を待っていては対応が遅れてしまいます。
そのため、「現場で即断・即行動できるチーム」をつくる必要があります。
その鍵となるのがエンパワーメントです。
エンパワーメントは単なる「権限委譲」ではなく、**信頼をベースにした“自走するチームづくり”**なのです。
🔹 エンパワーメントの3つの要素
- 信頼(Trust)
上司がメンバーを信頼し、細かく指示せずに任せる。
「あなたならできる」という信頼が、挑戦する意欲を引き出す。 - 裁量(Autonomy)
仕事の進め方や意思決定に自由度を持たせる。
失敗を許容することで、挑戦が生まれる。 - 支援(Support)
困ったときには相談できる体制を整える。
放任ではなく、「任せながら支える」姿勢が重要。
この3つが揃ってはじめて、真のエンパワーメントが機能します。
🔹 エンパワーメント型組織のメリット
- スピード感が上がる:現場が判断できるため、意思決定が早い。
- 創造性が高まる:メンバーの自由な発想が生かされる。
- モチベーションが上がる:自分の意見が尊重されることで、働く意欲が増す。
結果として、チームのエンゲージメント(信頼関係)も自然と高まります。
🔹 エンパワーメントを阻む3つの壁
- 「任せる」と「丸投げ」を混同している
エンパワーメントは放置ではなく、サポートと信頼の両立が大切。 - 失敗を許さない文化
挑戦が評価されず、失敗が責められると、自発的な行動は消える。 - 上司のコントロール欲
「自分がいないと回らない」という考え方は、チームの成長を妨げる。
リーダーは「任せる勇気」と「支える覚悟」を持つことが求められます。
🔹 現場での使われ方
「このチームはメンバーがエンパワーされているね。」
「もっと現場をエンパワーしていこう。」
このように、「自発的に行動できる状態」「責任と裁量を持つ働き方」を指す言葉として使われます。
🔹 まとめ
エンパワーメントとは、メンバーの力を信じ、任せ、引き出すリーダーシップ。
リーダーがすべてを指示する時代から、チーム全員で創る時代へ――。
“支配するマネジメント”ではなく、“信頼するマネジメント”こそが、これからの組織を強くします。
人が自発的に動くチームこそ、最も柔軟で、最も強いチームです。
📚 出典
- 経済産業省「エンパワーメント経営に関する調査報告」
- 日本能率協会『自走するチームのつくり方』
- Harvard Business Review “Empowerment: The Key to Engaged Teams”
