知っておきたい「 ことわざ 」30選
Day15:転ばぬ先の杖 ― 備えあれば憂いなし
💬 はじめに
「転ばぬ先の杖(つえ)」ということわざは、
「失敗する前に、あらかじめ準備や注意をしておくことが大切」という教えです。
意味をそのまま言えば、「転んでから杖を持っても遅い。転ぶ前に持っておけ」ということ。
つまり、何かが起こってから慌てて対処するのではなく、
日頃から予防・準備をしておくことの大切さを説いています。
現代社会ではリスク管理や危機対応にも通じる、まさに“先を読む知恵”のことわざです。
📜 ことわざの由来
この表現は室町時代から使われており、
当時は旅人が転ばないように杖を持って歩くことが一般的でした。
そこから、「転ばぬための備え=失敗を防ぐ準備」という意味が生まれ、
江戸時代にはすでに広く使われていたといわれています。
また、仏教の教え「未然防止」や「慎みの徳」とも深く関わっており、
「失敗を経験しなくても、想像力をもって危険を避ける」ことが賢明だとされてきました。
💡 現代における「転ばぬ先の杖」
この考え方は、まさに現代にも通じます。
災害への備え、健康管理、資金計画、情報セキュリティ……。
どれも「起こってから」では遅く、事前の準備が鍵になります。
・非常食や避難経路を準備しておく
・定期的な健康診断を受ける
・データをバックアップしておく
・トラブルを想定して対策マニュアルを作る
これらはすべて「転ばぬ先の杖」の実践です。
予防とは、未来の安心を今つくる行動。
少しの手間が、後の大きなトラブルを防ぐのです。
💼 ビジネスの現場での応用
企業経営でも、「転ばぬ先の杖」は重要な視点です。
トラブル発生後に対処するよりも、リスクを想定して先に動くことが信頼を守ります。
・顧客クレームが起こる前に、改善策を用意しておく
・納期トラブルを防ぐために、スケジュールを余裕をもって管理する
・新事業を始める前に、リスクと収益のバランスを分析する
成功する企業ほど、「リスクはゼロにできないが、被害は減らせる」と理解しています。
“備え”は守りではなく、攻めの戦略でもあるのです。
🌱 日常での「備え」の習慣
- 小さな不安を放置しない – その違和感がトラブルの芽かもしれません。
- 先に準備しておく癖をつける – “まだ大丈夫”より“もう準備しよう”。
- 失敗から学ぶ – 一度転んだら、その経験を次の“杖”にする。
備えることは、恐れることではありません。
「安心して生きる力」を育てることです。
🌸 おわりに
「転ばぬ先の杖」は、未来を見据えて行動する知恵の象徴。
小さな備えが、大きな安心を生み出します。
何かが起こってからでは遅い――だからこそ、今できる準備を少しずつ始めましょう。
その“杖”が、あなたの人生を支える強い味方になります。
📚出典
・『故事ことわざ辞典』(小学館)
・『日本ことわざ大辞典』(岩波書店)
・松原耕二『リスクに備える生き方』(NHK出版, 2019)
