知っておきたい「 ことわざ 」30選
Day18:立つ鳥跡を濁さず ― 去り際を美しくする心構え
💬 はじめに
「立つ鳥跡を濁さず(たつとりあとをにごさず)」ということわざは、
「立ち去るときは、あとをきれいにしていくべきだ」という意味の言葉です。
水辺を飛び立つ鳥が、濁りのない水面を残して去るように、
人もまた、去り際の行動で品格が問われる――
そんな美しい生き方の教えが、この言葉に込められています。
転職や引っ越し、卒業や別れなど、人生の節目には“立つ鳥”の瞬間があります。
そのときにどう振る舞うかで、あなたの印象は大きく変わるのです。
📜 ことわざの由来
この表現は、古くから日本に伝わる自然の観察と礼儀の精神から生まれました。
水面に立つ鳥が飛び立つとき、羽ばたいた後の水が濁らない――
そんな風景を見た昔の人が、「人もそうありたい」と感じたのが由来です。
江戸時代の武士や商人の間では、
「立つ鳥跡を濁さず」は“去り際の美学”として重んじられていました。
潔く立ち去ること、そして後を濁さないことが「誠実さ」「信頼」の象徴とされたのです。
💼 ビジネスに通じる「去り際の美学」
仕事の世界では、転職・異動・退職など“立つ鳥”の場面が少なくありません。
その際に、どんな去り方をするかで、あなたの評価は大きく変わります。
・引き継ぎ資料を丁寧にまとめる
・最後まで笑顔で感謝を伝える
・陰口や不満を残さない
これらを意識するだけで、
「この人とまた一緒に仕事をしたい」と思ってもらえる“好印象の去り方”ができます。
立つ鳥は、跡をきれいにするだけでなく、
次の人が気持ちよくスタートできる環境を残す――それが本当の誠意です。
💡 人間関係でも同じ
友情や恋愛でも、「別れ方」がその人の印象を決めます。
感情的に離れるよりも、感謝の言葉を残して静かに去るほうが、
お互いに心が穏やかで、後悔が少なくなります。
“縁を切る”のではなく、“きれいに終える”。
人間関係は、終わり方によって「次の良い出会い」が訪れるかどうかが決まるのです。
🌱 日常での実践ヒント
- 去る前に「ありがとう」を伝える – 感謝は最後に残す最高の贈り物。
- 整理整頓をして去る – 職場や部屋、データなどを整えるのも跡を濁さない心。
- 悪口を残さない – 言葉の後始末こそ、最も大切な“清掃”です。
たとえ別れが寂しくても、「立つ鳥跡を濁さず」の姿勢で終えれば、
あなたの誠実さは長く記憶に残ります。
🌸 おわりに
「立つ鳥跡を濁さず」は、去ることを“終わり”ではなく、“始まり”と捉える言葉です。
美しく去る人ほど、次の場所で新しい風を呼び込む。
過去を清め、感謝を残して次へ進む――
それが、人生を前向きに生きるための最高の美学です。
今日も、去るときは静かに、清らかに。
あなたの跡が、誰かの笑顔につながりますように。
📚出典
・『故事ことわざ辞典』(小学館)
・『日本の礼節と美意識』(講談社現代新書, 2014)
・松下幸之助『道をひらく』(PHP研究所, 1968)
