ユーザー心理から見る広告作成術
Day10:SNS広告とシェア心理
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の最大の特徴は、「人と人のつながり」を前提にしていることです。従来のテレビや新聞の広告は、企業から消費者に一方通行で情報を届ける仕組みでした。しかしSNSでは、ユーザー同士の「つながり」が情報拡散の原動力となります。そのため広告の効果も、「どれだけ多くの人に共感され、自然にシェアされるか」に大きく依存するのです。
シェアが生まれる心理
人がSNS上で広告をシェアする背景には、いくつかの心理が働いています。
- 共感
ユーザーが広告のメッセージに「自分の考えや価値観と同じだ」と感じたとき、自然に「誰かに伝えたい」という気持ちが生まれます。特に社会的意義のあるテーマ(環境問題、社会貢献、健康など)は強い共感を呼びやすく、拡散力が高い傾向にあります。 - 自己表現・自己ブランディング
SNSは「自分がどんな人間か」を表現する場でもあります。そのため「これをシェアすることで、自分の価値観やセンスを示せる」と感じた広告は拡散されやすいのです。心理学的に言えば、シェアは「利他的行動」であると同時に「自己承認欲求」を満たす行動でもあるのです(参考:Cialdini, Influence, 2001)。 - 役立ち・面白さ・驚き
ユーザーが「他の人にも役立つだろう」「みんなに教えたい」「思わず笑ってしまった」と感じたコンテンツはシェアされやすいです。Buzzfeedやナイキなどの事例では、ユーモアやストーリー性を加えた広告が爆発的に拡散した例が多くあります。

SNS広告の成功事例から学ぶ
たとえば、化粧品ブランドが「肌に優しい」「動物実験をしない」という環境配慮を前面に出した広告は、単なる商品紹介ではなく「企業の理念」に共感したユーザーによって拡散されました。これは単に「買ってください」というメッセージではなく、「この商品を応援することで社会をよくできる」という物語を提示しているからです。
また、食品メーカーがユーモアあふれる短い動画広告を作成し、TikTokで公開したところ、ユーザーが自発的にリミックスやパロディ動画を作成し、それが更なる拡散につながる事例もあります。このようにSNSでは「広告主の意図した範囲を超えてユーザーが参加してくれる」ことが大きな強みです。
まとめ
SNS広告のポイントは「共感」と「自己表現」です。広告を見たユーザーが「これをシェアすることで自分の価値も高まる」と感じる仕組みを作ることが大切です。さらに、ストーリー性、ユーモア、社会的意義のいずれかを盛り込むことで拡散力は格段に高まります。
👉 学びのポイント
- SNS広告は「共感」と「自己表現」で拡散する
- シェアされる要素は「役立つ」「面白い」「意義がある」
- 消費者を「共犯者」にするような広告設計が効果的
参考文献・出典
- Cialdini, R. B. (2001). Influence: Science and Practice. Allyn & Bacon.
- Kaplan, A. M., & Haenlein, M. (2010). Users of the world, unite! The challenges and opportunities of social media. Business Horizons, 53(1), 59–68.
- Nielsen (2016). Global Trust in Advertising Report.