Day11:灯台下暗し ― 身近なことほど見落としやすい

知っておきたい「 ことわざ 」30選

Day11:灯台下暗し ― 身近なことほど見落としやすい

💬 はじめに

夜の海で船の道しるべとなる灯台。
その光は遠くまで届き、多くの人を導きます。
けれど、その灯台の真下だけは、意外と暗いものです。

「灯台下暗し(とうだいもとくらし)」ということわざは、
この現象をもとにして、「身近なことほど見落としやすい」という意味を表します。
遠くばかり見ていて、足元の大切なことに気づかない――
私たちの日常にも、そんな瞬間がたくさんあるのではないでしょうか。


📜 ことわざの由来

この言葉の起源は古く、鎌倉時代の仏教書『沙石集(しゃせきしゅう)』に記録があります。
「灯台の下は暗し」という一文があり、
そこでは「仏法を説く僧侶であっても、自分の身近な真理に気づかない」
という例えとして使われています。

つまり、“人は遠くのことばかりに目を向け、足元を省みることを忘れがち”という、
人間の普遍的な性質を表したことばなのです。


💡 現代にも通じる「気づかない近さ」

このことわざは、現代にもそのまま当てはまります。

たとえば、仕事で「お客様の満足」を追求するあまり、
一緒に働く仲間の努力を見落としていませんか?
家族のために頑張るうちに、
一番身近な家族との会話や笑顔を忘れていませんか?

SNSで“遠くの誰か”を気にするあまり、
目の前の大切な人をおろそかにしてしまう――
これもまさに「灯台下暗し」の一例です。

身近なものは当たり前すぎて、価値に気づきにくい。
でも、本当に守るべきものは、案外すぐそばにあるのです。


💼 ビジネスでの教訓

ビジネスの世界でも、「灯台下暗し」は重要な視点を与えてくれます。

・社内の改善点を見落としていないか
・長年の取引先や常連顧客をおざなりにしていないか
・足元の強みを活かしきれていないのではないか

遠くの市場や新しい顧客を追いかける前に、
まず自分たちの“原点”を見直すことが、
新しい成長のヒントになることがあります。

トヨタの「現場主義」や、老舗企業が代々守ってきた「初心」も、
まさに“足元を見つめ直す力”の象徴です。


🌱 日常でできる「見直しの習慣」

  1. 感謝を言葉にする – 当たり前と思っていた人に「ありがとう」を伝える。
  2. 原点を思い出す – なぜその仕事・関係・夢を始めたのかを振り返る。
  3. 日常を観察する – 家や職場の中にも、新しい発見が隠れています。

足元に光を当てることで、見えていなかった大切なものが輝き始めます。


🌸 おわりに

「灯台下暗し」は、私たちに“身近なことへの気づき”を促す言葉です。
遠くの理想や他人と比べる前に、
まず自分の足元を照らしてみましょう。

そこには、ずっとあなたを支えてきた人や出来事がきっとあります。
今日という一日も、“すぐそば”の幸せを大切に過ごしてみてください。

📚出典

・『沙石集』(鎌倉時代)
・『故事ことわざ辞典』(小学館)
・中村明『日本語の教養100選』(岩波新書, 2010)