Day13:情けは人の為ならず ― やさしさはめぐりめぐって自分に返る

知っておきたい「 ことわざ 」30選

Day13:情けは人の為ならず ― やさしさはめぐりめぐって自分に返る

💬 はじめに

「情けは人の為ならず」ということわざは、
よく誤解されやすい日本語のひとつです。

多くの人が「人に情けをかけると、その人のためにならない」という意味だと勘違いしますが、
本来の意味はまったく逆。

正しくは、「人に親切にすれば、やがて自分にも良い形で返ってくる」という教えです。
つまり、“思いやりはめぐりめぐって自分を救う”という、優しさの連鎖を示すことばなのです。


📜 ことわざの由来

このことわざの由来は、古くは仏教の「因果応報」や「善因善果」という考えにあります。
善い行いをすれば善い結果が返り、悪い行いをすれば悪い結果が返る――
その思想が「情けは人の為ならず」という表現に結びつきました。

江戸時代には「情けは巡る」とも言われ、
人にかけた情けが、回り回って自分の幸せを呼ぶという意味で広まったとされています。

つまり、このことわざは“人間関係の法則”をシンプルに言い表した言葉なのです。


💡 やさしさは「循環する力」

人に親切にすることは、見返りを求めない行為。
しかし、不思議なことに、誰かに親切にすれば必ず別の形で良いことが自分に返ってきます。

たとえば、
・困っている同僚を助けたら、後日あなたが困ったときに助けられる
・道を譲ったら、見知らぬ人から思わぬ感謝の笑顔をもらえる
・家族に優しく接したら、家庭の空気が穏やかになる

情けは“善意の循環”を生む力なのです。
親切にされた人は、また誰かに優しくしたくなる。
その優しさが、めぐりめぐってあなたのもとに戻ってくるのです。


💼 ビジネスにおける「情け」の力

この考え方は、ビジネスの世界にも深く通じます。
お客様への誠実な対応、取引先への思いやり、同僚へのサポート――
そのどれもが、長い目で見れば自分の信頼や評価として返ってきます。

短期的な利益よりも、長期的な信頼を大切にする人が成功するのは、
この「情けは人の為ならず」の精神を体現しているからです。

情けとは、戦略ではなく“人としての美徳”。
誠実に人と向き合うことで、自然と良い循環が生まれます。


🌱 日常で実践する3つの「情け」

  1. 小さな親切を習慣に – 「ありがとう」と言う、ドアを開ける、それだけで十分。
  2. 見返りを求めない – 親切は相手のためではなく、自分の心を豊かにするために。
  3. 嫌なことがあっても優しさを忘れない – 優しさは、自分の品格を守る盾。

やさしさは“負け”ではなく、“強さ”です。


🌸 おわりに

「情けは人の為ならず」は、思いやりが自分の人生を豊かにするという真理を教えてくれます。
他人を思うことが、結局は自分を救う。

社会が少し冷たく感じる時代だからこそ、
この言葉を胸に「やさしさの循環」を広げていきたいものです。

あなたが今日かけた一つの情けが、
未来のあなたに、きっとあたたかく返ってきます。

📚出典

・『故事ことわざ辞典』(小学館)
・『日本の名言・格言1000』(PHP文庫, 2019)
・松下幸之助『道をひらく』(PHP研究所, 1968)