京都の世界遺産を学ぶ30日
Day14「西芳寺 ― 苔寺と禅の世界」
こんにちは。「京都の世界遺産を学ぶ30日」シリーズの14日目です。
本日は、その美しい苔庭で世界的に知られる 西芳寺(さいほうじ) を紹介します。
西芳寺とは?
西芳寺は京都市西京区にある臨済宗の寺院で、別名「苔寺(こけでら)」として親しまれています。創建は奈良時代と伝えられ、奈良の高僧・行基によって草創されたとされますが、現在の禅寺としての姿を整えたのは14世紀、夢窓疎石によるものです。
室町時代には五山文化の影響を受け、禅の精神と庭園美が融合した寺院として発展しました。

苔寺と呼ばれる理由
西芳寺の最大の特徴は、境内一面を覆う約120種類の苔です。庭園は上下二段に分かれ、上段は枯山水、下段は池泉回遊式庭園で構成されています。四季を通じて庭園が緑の苔に包まれ、幻想的な光景を生み出します。
特に雨上がりの苔庭は一層鮮やかで、静けさの中に生命力を感じさせます。苔が主役となる庭園は世界的にも珍しく、日本ならではの美意識を象徴しています。
夢窓疎石の作庭
庭園は天龍寺を作庭した夢窓疎石によって手がけられました。彼の作庭思想は「自然と人為の調和」であり、西芳寺の庭園はその集大成といえる作品です。特に心字池を中心にした庭園構成は、禅の思想を具現化したものとして高く評価されています。

苔寺の参拝方法
西芳寺は他の寺院とは異なり、通常拝観はできません。参拝希望者は事前に往復はがきで申し込み、写経を行ったうえで庭園拝観が許されます。これは観光ではなく「修行」として寺を訪れるという精神を大切にしているからです。
そのため、訪れる人々は苔庭を「観光地」としてではなく、心を静める「禅の場」として体験することができます。
世界遺産としての価値
1994年、西芳寺は「古都京都の文化財」の一つとしてユネスコ世界遺産に登録されました。その価値は、夢窓疎石による庭園美と、苔という自然要素が加わった独自の景観にあります。
また、修行と参拝を重視する姿勢は、禅の精神を今に伝える貴重な文化遺産として高く評価されています。
西芳寺のHPはこちら→ https://saihoji-kokedera.com/
まとめ
西芳寺は「苔寺」として世界中から注目されるだけでなく、禅の精神を体感できる特別な場所です。苔庭の静寂に身を委ねれば、自然と心が落ち着き、日常の喧騒を忘れることができるでしょう。
次回は「金閣寺 ― 北山文化と黄金の輝き」を取り上げます。京都を象徴するきらびやかな寺院の魅力を探っていきます。
出典
- 西芳寺公式サイト
- 京都市公式観光情報「京都観光Navi」
- 文化庁「古都京都の文化財」