最初は謎だよね!よく聞くビジネス用語
Day16:クリティカルシンキング ― 思い込みを外す分析力
「クリティカルシンキング(Critical Thinking)」という言葉を聞くと、「批判的に考える」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、ビジネスでいうクリティカルシンキングは「否定する力」ではなく、思い込みを排除して、客観的かつ多角的に考える力を意味します。
つまり、与えられた情報や常識をそのまま受け取るのではなく、
「本当にそうなのか?」
「他の見方はできないか?」
と自分で検証しながら考える――それがクリティカルシンキングです。

🔹 ロジカルシンキングとの違い
前回の「ロジカルシンキング」と混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。
| 思考法 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| ロジカルシンキング | 筋道立てて考える | 正しい構造を作る思考 |
| クリティカルシンキング | 前提を疑って考える | 正しい前提を見つける思考 |
つまり、ロジカルシンキングが「どう考えるか」に焦点を当てるのに対し、
クリティカルシンキングは「何を考えるべきか」を見極める力です。
🔹 ビジネスでの重要性
現代のビジネスでは、情報が多すぎて正しさを見失いやすい時代です。
たとえば、会議で「売上が下がったのは広告の効果が薄いからだ」と誰かが言ったとします。
クリティカルシンキングでは、すぐにその意見を受け入れるのではなく、こう考えます。
- そもそも「広告効果が薄い」というデータはあるか?
- 他に「商品」「価格」「競合」など別の要因はないか?
- そもそも“売上”の定義や測定期間は正しいか?
このように、前提や仮説を疑いながら考えることで、根本的な原因を発見できるのです。
🔹 クリティカルシンキングの3ステップ
- 前提を明確にする
議論や意見の背景にある「暗黙の前提」を洗い出す。
例:「この施策は若者向けだ」→本当に“若者”をどう定義している? - 視点を変えてみる
別の立場や顧客の視点から考える。
例:「社員の生産性が低い」→“管理方法”や“ツール環境”が原因かもしれない。 - 根拠を確かめる
データや事実を確認し、感覚的な意見を整理する。
例:「売上が下がった」→どの期間・どの地域・どの商品で?
これらのステップを踏むことで、思考の精度が一段と高まります。
🔹 よくある誤解
クリティカルシンキングは「相手の意見を否定すること」ではありません。
大切なのは、意見の正しさを確認し、より良い結論を導く姿勢です。
たとえば、上司や先輩の意見に対しても、反発ではなく「検証の視点」で考えます。
「なぜそう言えるのか?」
「別の可能性もありますか?」
といった質問は、議論を深めるための建設的な行動です。
🔹 現場での使われ方
ビジネス現場では次のように使われます。
「このデータの前提をクリティカルに見直そう。」
「もっとクリティカルな視点で分析してみて。」
つまり、「一歩引いて冷静に考える」「思い込みを外す」という意味合いで使われています。
分析・企画・戦略立案など、意思決定の正確さが求められる仕事ほど重要です。
🔹 まとめ
クリティカルシンキングとは、思い込みを外し、事実と論理に基づいて考える力。
“正しい答え”を出す前に、“正しい問い”を立てることができるのが、真の思考力です。
情報を鵜呑みにせず、自分の頭で検証する。
それこそが、変化の激しい時代を生き抜くビジネスパーソンに欠かせないスキルです。
📚 出典
- 経済産業省「ビジネススキル標準(クリティカルシンキング編)」
- 日本能率協会『思考を深めるクリティカルシンキング実践法』
- Harvard Business Review “Critical Thinking: The Key to Better Decisions”
