ユーザー心理から見る広告作成術
Day16:広告デザインにおける視線誘導
広告の効果を大きく左右する要素の一つが「視線誘導」です。私たちは広告を見た瞬間から無意識に目を動かし、情報を拾い取ります。この「どこから読むか」「何を最初に目にするか」が設計されていないと、せっかくのコピーやビジュアルも十分に伝わらないままスルーされてしまうのです。

人間の視線にはパターンがある
人間の視線の動きにはある程度の規則性があります。広告やWebデザインの研究でよく知られているのが「F型」と「Z型」のパターンです。
- F型パターン
Webページの閲覧研究で有名なニールセン・ノーマン・グループの調査によると、人はまず横方向に上部をスキャンし、次に少し下に移動してまた横に目を走らせ、その後左側を縦に流し読みする傾向があります。これが「F字型」です。ニュース記事や検索結果ページなど、情報が縦に並ぶ構造では特にこの傾向が強く表れます。 - Z型パターン
広告やランディングページなど、ビジュアルとテキストが組み合わさったデザインでは「Z字型」に視線が動くことが多いです。左上からスタートし、右上に移動、そこから斜めに左下へ視線が落ち、最後に右下へ向かいます。人が自然に紙面や画面をスキャンする動きを前提にした設計です。
このパターンを理解すれば、「重要な情報をどこに配置すべきか」が見えてきます。例えばキャッチコピーを左上に置き、商品の特徴を中央に、価格や購入ボタンを右下に配置すると、自然に流れに沿って情報が伝わるのです。
視線を導く具体的なテクニック
視線誘導は配置だけでなく、デザイン要素によっても強化できます。
- 矢印やライン
グラフィックの中に矢印を入れると、人の視線はその方向に流れやすくなります。例えば「購入はこちら」のボタンに矢印を添えるだけでクリック率が変わることもあります。 - 人物の視線
心理学の研究によると、人は無意識に「他者が見ている方向」に視線を移す傾向があります。赤ちゃんが商品を見つめている写真を広告に入れると、受け手も同じ方向に視線を動かし、商品の存在を自然に認識してしまうのです。 - コントラストと余白
人間の目は「目立つもの」に引き寄せられます。背景とのコントラストを強めたり、周囲に余白を多めにとるだけで、視線はその要素に集中します。
視線誘導で広告効果が変わる
広告デザインはアートではなく「伝達のための設計」です。どれだけ美しいデザインでも、情報が伝わらなければ意味がありません。F型やZ型の視線パターンを前提に、矢印や人物写真、色彩コントラストを駆使して「読んでほしい順番」に沿って情報を配置することで、広告の理解度と行動率は大きく変わります。
👉 学びのポイント
- 視線の流れをデザインすることが広告の基本
- Z型やF型のパターンを意識すると伝わりやすい
- 視線誘導を工夫すれば、広告は格段に理解されやすくなる
参考情報(出典)
- Nielsen Norman Group, “F-Shaped Pattern For Reading Web Content” (2006)
- Yarbus, A.L. Eye Movements and Vision (1967) – 視線の研究の古典的文献
- 日本広告学会編『広告効果の心理学』丸善出版