ユーザー心理から見る広告作成術
Day17:色とフォントが与える印象
広告において、デザイン全体の印象を大きく左右する要素が「色」と「フォント」です。どちらも一見すると単なる見た目の問題に思われがちですが、実際には人間の感情や行動に直結しており、広告の効果を左右する心理的トリガーとなります。

色がもたらす心理的効果
色は人間の無意識に強く作用し、瞬時に感情を喚起します。心理学の研究によると、色は「数秒以内に第一印象を決める」要素の一つであり(Elliot & Maier, 2014, Annual Review of Psychology)、購買行動にも影響を与えることが確認されています。
- 赤:緊張感や行動を促す色。セール表示や「限定」の強調に多用されるのは、人を急がせ、即決させる効果があるためです。コカ・コーラがブランドカラーに赤を採用しているのも「活力」「エネルギー」を表現するためです。
 - 青:信頼・誠実・安心を象徴。銀行や保険、IT企業のブランドに多用されます。FacebookやTwitterなどのSNSが青を基調にしているのも、ユーザーに「安心して利用できる」というイメージを与えるためです。
 - 黄色:注意や楽しさを表現。警告表示や子ども向け商品で使われることが多く、視覚的に強く目を引く力があります。
 - 黒:高級感や権威を演出。ハイブランドや高級車の広告に頻繁に使われるのは、シンプルながらも力強い印象を与えるからです。
 
このように、広告で色を選ぶ際には単なる好みではなく、心理的にどのような感情を喚起したいのかを基準にすると効果的です。
フォントがもたらす印象
文字の形、つまりフォントも広告の「声色」を決定づけます。言葉は同じでも、フォントが変わると印象は大きく異なります。
- 丸ゴシック体:やわらかく親しみやすい印象。子ども向け商品や日常的なサービスの広告に向いています。
 - 明朝体:上品さや知性を表現。書籍や教育関連、伝統や信頼を重視する広告に多く用いられます。
 - 太字・大文字:強調の手法として有効。特にキャッチコピーの一部を太字にすると、流し読みされても印象に残りやすくなります。
 - 手書き風フォント:温かみや個性を出せる反面、読みやすさを犠牲にする可能性もあるため、使いどころが重要です。
 
広告におけるフォントの選択は、単に「読みやすいかどうか」だけでなく「そのブランドがどんな声で話しかけているのか」を決める行為なのです。
色とフォントを統一する意味
ブランドイメージを確立する上で大切なのは、一貫性です。色やフォントがバラバラだと、広告全体が雑多な印象になり、消費者の記憶に残りにくくなります。逆に、コーポレートカラーや統一されたフォントを継続的に使うことで「この色=このブランド」という認知が定着し、ブランド力が高まります。
Appleの広告はその典型例で、白とシンプルなサンセリフ体をベースに構成されています。この一貫性が「洗練」「革新」といったブランドイメージを強化し、世界的な認知につながっているのです。
まとめ
広告における色とフォントは、単なる装飾ではなく「感情を動かす仕掛け」であり「ブランドを語る言語」です。色は無意識に感情へ働きかけ、フォントは広告の声色を決定する。そして両者の統一感が、ブランドの信頼性と記憶への定着を大きく高めるのです。
👉 学びのポイント
- 色は無意識に感情を喚起する
 - フォントは広告の声色を決める
 - 一貫性のあるデザインがブランド力を強化する
 
📖 参考文献
- Elliot, A. J., & Maier, M. A. (2014). Color Psychology: Effects of Perceiving Color on Psychological Functioning in Humans. Annual Review of Psychology, 65, 95–120.
 - Henderson, P. W., Giese, J. L., & Cote, J. A. (2004). Impression Management Using Typeface Design. Journal of Marketing, 68(4), 60–72.
 
