Day18:動画広告と感情の動かし方

ユーザー心理から見る広告作成術

Day18:動画広告と感情の動かし方

近年、動画広告の需要は爆発的に伸びています。スマートフォンやSNSの普及により、私たちの生活の中で動画が占める割合はますます大きくなりました。動画広告の魅力は「視覚」と「聴覚」を同時に刺激できる点にあります。静止画や文章だけでは伝わりにくい感情や雰囲気を、動画は直感的かつ強烈に訴えかけることができます。

動画広告の最大の特徴:感情を動かす力

心理学的にも、人の意思決定の多くは感情に基づいているとされています。たとえばDamasio(1994)の研究では、感情が意思決定に不可欠な役割を果たしていることが示されました。動画はストーリー性や音楽、映像のテンポを駆使して「笑い」「感動」「驚き」といった感情を瞬時に引き出し、購買行動につなげやすいのです。

最初の数秒が命

YouTubeやSNSにおける動画広告の多くはスキップ可能です。視聴者は興味がなければ5秒以内に広告を飛ばしてしまいます。そのため動画広告においては「冒頭の3〜5秒で心をつかむ」ことが鉄則です。ここで効果的なのは、インパクトのある映像や問いかけです。たとえば「あなたは毎日◯分を無駄にしていませんか?」と問いかける、または強烈なビジュアルで「何だろう?」と興味を引き出すなどが有効です。

音楽とナレーションの力

音楽は感情をコントロールする非常に強力な要素です。感動系の広告であれば穏やかなピアノやストリングスが心に響きますし、スポーツやエナジードリンクの広告であればテンポの速い音楽やビートが効果的です。心理学でも「リズムや旋律は情動に直結する」という研究(Juslin & Västfjäll, 2008)があり、適切な音楽は視聴体験を大きく左右します。またナレーションも重要で、声のトーンやスピードによって信頼感や親近感を演出できます。

ストーリーテリングで記憶に残す

優れた動画広告は「物語性」を持っています。単なる商品説明ではなく、「悩みを抱える主人公が商品と出会い、理想の未来を手に入れる」というストーリーを描くことで、受け手は強く共感します。これはDay6で触れた「ストーリーテリング」と同様の効果で、動画はその力を最大限に発揮できる媒体といえるでしょう。

行動につなげる「CTA」

最後に欠かせないのが「コール・トゥ・アクション(CTA)」です。動画広告の目的は感情を揺さぶるだけでなく、具体的な行動へつなげることにあります。例えば「今すぐ公式サイトでチェック」「無料トライアルはこちら」といった明確なメッセージを映像の最後に提示することで、視聴者は次の一歩を踏み出しやすくなります。

動画広告の成功事例

AppleやNikeの動画広告はその代表例です。Appleはシンプルで洗練された映像と音楽でブランドイメージを確立し、Nikeは「Just Do It」というメッセージにストーリー性を加え、世界中の人々を鼓舞しています。いずれも「感情を動かし、行動を促す」という動画広告の本質を体現しています。


👉 学びのポイント

  • 動画はマルチ感覚で感情を動かす
  • 最初の5秒で注意をつかむことが最重要
  • 音楽・ナレーション・ストーリー・CTAの組み合わせが成功の鍵

出典参考

  • Damasio, A. (1994). Descartes’ Error: Emotion, Reason, and the Human Brain.
  • Juslin, P. N., & Västfjäll, D. (2008). Emotional responses to music: The need to consider underlying mechanisms. Behavioral and Brain Sciences, 31(5), 559–621.
  • Nielsen (2019). The Impact of Video Advertising on Consumer Behavior.