最初は謎だよね!よく聞くビジネス用語
Day22:イノベーション ― 新しい価値を生み出す発想力
「イノベーション(Innovation)」という言葉は、ビジネスの世界で最も頻繁に使われるキーワードのひとつです。
しかし、「新しいことをやる」「革新的な技術を生み出す」といったイメージが先行し、
その本当の意味や実践方法を誤解しているケースも少なくありません。
イノベーションとは、新しい価値を社会に生み出すこと。
それは必ずしも“新技術の発明”を意味するのではなく、既存のものを新しい組み合わせで活かす発想も含まれます。

🔹 イノベーションの本質
経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが提唱した「イノベーションの5分類」は有名です。
彼はイノベーションを「技術革新」ではなく「価値の新しい創出」と定義しました。
その5つの類型は以下の通りです。
- 新しい製品の導入(Product)
例:スマートフォンのように、生活を変える新製品。 - 新しい生産方法(Process)
例:AIや自動化を使った効率的な生産システム。 - 新しい市場の開拓(Market)
例:海外進出や新たなターゲット層への展開。 - 新しい供給源の獲得(Resource)
例:サステナブル素材や新規パートナーの導入。 - 新しい組織の形(Organization)
例:フラットなチーム制やリモートワーク体制。
このように、新しい価値の形は多様であり、必ずしも“モノ”を作るだけがイノベーションではありません。
🔹 イノベーションと改善の違い
「改善」と「イノベーション」は似ていますが、目的が異なります。
| 項目 | 改善(Improvement) | イノベーション(Innovation) |
|---|---|---|
| 意味 | 現状を少し良くする | 仕組みを根本から変える |
| ゴール | 効率化・最適化 | 新しい価値の創出 |
| アプローチ | 現状維持の延長線 | ゼロベースで再構築 |
改善が「よりよくする」活動なら、イノベーションは「まったく違う形に変える」発想です。
つまり、“変える勇気”を持つことがイノベーションの第一歩なのです。
🔹 イノベーションを生む3つの視点
- 課題発見力(Problem Finding)
「何が問題か」「どこに不便があるか」を見つける力。 - 結びつける力(Connection)
異なる分野やアイデアを組み合わせ、新しい価値を創る。
例:音楽 × テクノロジー → ストリーミング配信 - 試す力(Prototyping)
まずは小さく実験し、成功と失敗を重ねて形にしていく。
イノベーションは“ひらめき”だけではなく、“試行錯誤の積み重ね”から生まれます。
🔹 現場での使われ方
「この商品開発にはイノベーションが必要だ。」
「業務プロセスにイノベーションを起こそう。」
といった形で、「新しい発想で変化を起こす」という意味で使われます。
最近では「オープンイノベーション(企業間の共創)」や「ソーシャルイノベーション(社会課題の解決)」など、広い文脈でも使われています。
🔹 イノベーションを阻む3つの壁
- 現状維持の思考:「今のままで十分」
- 失敗を恐れる文化:「間違えたら評価が下がる」
- 縦割りの組織構造:「部署をまたぐ連携が難しい」
これらを壊すためには、「心理的安全性」と「挑戦を歓迎する風土」が不可欠です。
🔹 まとめ
イノベーションとは、新しい価値を社会に生み出すこと。
技術や製品だけでなく、人の考え方や組織の仕組みにも変化を起こせます。
“新しいことを思いつく人”よりも、“新しいことを実行する人”が未来をつくります。
変化を恐れず、柔軟に挑戦し続ける――
それが、イノベーションを起こすための最大の原動力です。
📚 出典
- ヨーゼフ・シュンペーター『経済発展の理論』
- 経済産業省「イノベーション・エコシステム形成指針」
- Harvard Business Review “How to Build an Innovative Culture”
