ユーザー心理から見る広告作成術
Day24:リターゲティング広告の心理
インターネットで買い物を検討していて、一度商品ページを見ただけなのに、その後SNSやニュースサイトを開くと同じ商品の広告が繰り返し表示される――そんな経験をしたことは誰にでもあるでしょう。これは「リターゲティング広告(リマーケティング広告とも呼ばれる)」といいます。ユーザーが過去に閲覧した行動データをもとに、その人に合わせて広告を出し続ける仕組みです。

単純接触効果(ザイアンス効果)
リターゲティングの効果の裏には「単純接触効果(ザイアンス効果)」という心理学的原理があります。アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが1968年に発表した研究によると、人間は繰り返し接触する対象に対して好意や親近感を持ちやすくなることが示されています。たとえば、初めて見たときには特に印象に残らなかったブランドや商品でも、何度も目にするうちに「気になる」「信頼できそう」と感じやすくなるのです。
広告の世界では、この単純接触効果を意識的に活用することで、消費者の購買意欲を高めています。実際、多くの調査で「一度訪問したユーザーに再び広告を見せると、購入に至る確率が大幅に高まる」ことが報告されています。GoogleやFacebookといった広告プラットフォームがリターゲティング機能を標準的に提供しているのも、この効果がデータ的に裏付けられているからです。
ターゲティング広告のリスク
しかしリターゲティング広告には「やりすぎ」のリスクもあります。ユーザーが「しつこい」「監視されている」と感じてしまうと、逆にブランドへの不信感や嫌悪感につながります。これを「ストーカー広告」と呼ぶ人もおり、近年では広告の出稿側に対しても頻度管理や期間の最適化が求められています。たとえば、ある商品を1回購入した後も延々とその商品の広告を見せられると「無駄」「不快」と感じるのは自然なことです。
効果的なリターゲティングのポイントは「適切な接触回数」と「タイミングの工夫」です。心理学の知見では、数回の接触で好意が高まることはあっても、10回以上繰り返すと飽きや逆効果を招く可能性があるとされています。また、ユーザーが購買を検討するタイミング(給料日、週末など)を意識した出稿は成果につながりやすいといわれています。
リマインダー効果
さらに、単純接触効果に加えて「リマインダー効果」も働きます。人は一度検討したものを再び目にすると、そのときの感情や思考が呼び起こされやすくなります。「そういえばあの商品、気になっていたな」と思い出して購入につながるのです。
まとめ
まとめると、リターゲティング広告は「忘れられないようにする」「繰り返し目にすることで好意を高める」という心理効果を利用した強力な手法です。ただし、それはあくまでも「適度な回数と誠実な運用」が前提。ユーザーの立場を無視して一方的に押しつければ、逆に信頼を損ないかねません。広告を設計する側は「顧客に寄り添うコミュニケーション」という姿勢を忘れずに、バランスの取れた出稿を心がける必要があります。
👉 学びのポイント
- リターゲティングは「単純接触効果」を活用する仕組み
 - 接触回数やタイミングを最適化することが成功のカギ
 - やりすぎは「ストーカー広告」となり逆効果
 
参考文献・出典
- Zajonc, R. B. (1968). “Attitudinal effects of mere exposure.” Journal of Personality and Social Psychology, 9(2), 1–27.
 - Google Ads公式ヘルプ「リマーケティングについて」
 - Facebook Business「リターゲティング広告の活用方法」
 
