最初は謎だよね!よく聞くビジネス用語
Day25:コンピテンシー ― 成果を生む行動特性
ビジネスの人事や評価制度でよく耳にする「コンピテンシー(Competency)」という言葉。
「スキル」や「能力」とは少し違うニュアンスを持ち、最初は意味がつかみにくい用語です。
コンピテンシーとは、高い成果を出す人に共通して見られる行動特性のこと。
つまり、「結果を出す人はどんな行動をしているか」を体系的に整理した考え方です。

🔹 コンピテンシーの基本的な意味
“Competency” は英語で「適性」「有能さ」を意味しますが、
ビジネスの世界では「成果を上げる行動パターン」を指します。
たとえば――
- 優秀な営業担当者は「顧客の課題を深く聞き出す」傾向がある。
- 優れたマネージャーは「チームの意見を引き出して意思決定する」。
このような“行動の傾向”を分析し、評価や育成に活かすのがコンピテンシーの考え方です。
🔹 スキルや知識との違い
コンピテンシーは「できること」ではなく「どうやっているか」に焦点を当てます。
| 比較項目 | スキル/知識 | コンピテンシー |
|---|---|---|
| 意味 | 持っている能力・知識 | 能力を成果につなげる行動 |
| 評価対象 | 結果・知識量 | 行動プロセス |
| 例 | Excelが使える、英語が話せる | 問題を整理し、解決策を提案できる |
つまり、「スキルを持っている」だけでは不十分で、
そのスキルをどのように使うかが成果を分けるという考え方です。
🔹 コンピテンシーモデルとは
企業では、優秀な人材の行動をもとに「コンピテンシーモデル(行動基準表)」を作成します。
これは、人事評価・採用・教育などさまざまな場面で活用されます。
モデルの例:
- 顧客志向 ― 相手の立場で考え、課題を把握する。
- 課題解決力 ― 問題を論理的に分析し、実行計画を立てる。
- コミュニケーション ― 意見を分かりやすく伝え、関係者を巻き込む。
- チームワーク ― 他者の強みを活かし、協力して成果を出す。
- リーダーシップ ― 方針を示し、メンバーを導く。
これらの行動が、成果を上げる社員に共通していると分析されます。
🔹 導入のメリット
- 客観的な評価ができる
感情や印象ではなく、「具体的な行動」に基づいて評価できる。 - 採用・育成の基準になる
どんな行動が成果を生むかを明確にできるため、教育方針がぶれない。 - 企業文化を言語化できる
「うちの会社で求められる人材像」を明確に示すツールにもなる。
🔹 よくある誤解
コンピテンシーは「完璧なマニュアル」ではありません。
全員が同じ行動をすれば成果が出るわけではなく、成功の“傾向”を見える化するための参考指針です。
また、時代や事業が変化すれば、成果を生む行動も変わります。
そのため、定期的にモデルを見直すことが重要です。
🔹 現場での使われ方
「この職種のコンピテンシーを定義しよう。」
「評価シートはコンピテンシーモデルをベースにしています。」
このように、人事評価・採用基準・教育研修などで活用されます。
面接でも「あなたが成果を出した行動を教えてください」と聞かれるのは、コンピテンシー面接の一例です。
🔹 まとめ
コンピテンシーとは、成果を生む行動の“型”を言語化したもの。
「何ができるか」ではなく、「どう行動しているか」を重視する考え方です。
知識やスキルは学べますが、行動特性は“習慣”として身につけることが大切。
日々の仕事の中で、自分の行動パターンを意識することから始めましょう。
📚 出典
- 経済産業省「社会人基礎力とコンピテンシー」
- 日本能率協会『行動特性で人を育てるコンピテンシー経営』
- Harvard Business Review “What is Competency-Based Management?”
