Day4:高山寺 ― 鳥獣戯画と学問の寺

京都の世界遺産を学ぶ30日

Day4:高山寺 ― 鳥獣戯画と学問の寺

こんにちは。「京都の世界遺産を学ぶ30日」シリーズの4日目です。
今日は、漫画のルーツとも呼ばれる国宝「鳥獣戯画」で有名な高山寺を取り上げます。


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高山寺とは?

高山寺(こうさんじ)は京都市右京区の山あいに位置する古刹で、山号を栂尾山(とがのおさん)といいます。創建は奈良時代にまでさかのぼると伝えられますが、本格的に整備したのは鎌倉時代初期の高僧・明恵上人(みょうえしょうにん)です。彼は学問と修行に生涯を捧げ、仏教研究の拠点として高山寺を発展させました。

1994年、「古都京都の文化財」の一つとしてユネスコ世界遺産に登録され、その歴史的・文化的価値が世界的に評価されています。


鳥獣戯画 ― 日本最古の漫画?

高山寺の名を広めた最大の理由は、国宝「鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつぎが)」です。兎や蛙、猿などの動物たちが人間のように相撲を取ったり、遊んだりしている様子を描いた絵巻で、そのユーモラスな表現から「日本最古の漫画」と称されます。

絵師は不明ですが、筆致は自由で生き生きとしており、現代の私たちが見ても思わず笑みがこぼれる魅力があります。学問の寺でありながら、こうした遊び心あふれる文化財を生んだことも高山寺の特色です。


明恵上人と学問の寺

高山寺は学問寺とも呼ばれ、明恵上人の時代には多くの経典や典籍が集められました。彼は仏教だけでなく、文学・天文学・薬学など幅広い知識を修め、弟子たちにも学問を重んじる姿勢を伝えました。

その精神は、今日の「学問を尊ぶ京都」の土壌を育んだとも言えるでしょう。境内の「石水院(せきすいいん)」は明恵が住んだ場所で、現在も国宝建築として残り、往時の学問と修行の空気を感じることができます。


自然と共生する文化財

高山寺のもう一つの魅力は、自然環境と一体化した文化財であることです。山の斜面に沿って配置された堂宇や石段、背後の森の景観は、人工と自然が調和した美しさを生み出しています。ユネスコの評価も、こうした「文化的景観」の価値に重きを置いています。

また、清らかな水を湛える渓流があり、境内全体が心を鎮める修行空間となっています。観光というよりも、訪れる人に深い静けさを与えてくれる場所です。

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世界遺産としての高山寺

高山寺は「鳥獣戯画」の知名度が高いですが、世界遺産としての価値はそれだけではありません。明恵上人による学問寺としての意義、自然と一体化した寺院景観、そして文化芸術を育んだ場としての歴史が重なり合い、世界に誇る遺産となっています。


高山寺の観光案内はこちら→ https://www.kyoto-kankou.or.jp/info_search/3466

まとめ

高山寺は、学問と芸術、そして自然との共生を体現した寺院です。鳥獣戯画のユーモラスな世界に触れると同時に、知と祈りが息づく空間としての魅力も再発見できます。

次回は「清水寺 ― 舞台からの絶景」を取り上げます。京都観光で最も人気のある寺の一つ、その背景を掘り下げていきましょう。


出典

  • 京都市文化財保護課「高山寺」
  • 文化庁「古都京都の文化財」
  • 東京国立博物館『鳥獣戯画』展覧会図録