ユーザー心理から見る広告作成術
Day8:購買行動モデル(AIDMA/AISAS)
広告やマーケティングを考える上で欠かせないのが「消費者の購買行動を理解すること」です。どんなに優れた広告でも、消費者がどのような流れで商品に興味を持ち、購入に至るかを把握していなければ、効果的な設計はできません。そこで登場するのが「購買行動モデル」です。これは人が買い物をするときの心理や行動のステップを体系化したもので、古くから広告業界で活用されてきました。

AIDMAモデルの基本
最も有名なモデルのひとつが「AIDMA(アイドマ)」です。1920年代にアメリカの広告学者ローランド・ホールが提唱したとされる古典的なモデルで、以下の5つの段階から構成されます。
- Attention(注意):まず広告や商品に気づく
- Interest(興味):内容に興味を持つ
- Desire(欲求):欲しいという気持ちが芽生える
- Memory(記憶):その気持ちを覚えておく
- Action(行動):実際に購入に至る
例えば、テレビで新しい清涼飲料水のCMを見て「おいしそう!」と感じ(興味)、暑い日にふと思い出して(記憶)、コンビニで購入する(行動)。これがAIDMAモデルの典型例です。
AISASモデルの登場
しかし、時代が進みインターネットが普及すると、人々の購買行動は大きく変化しました。従来のように「記憶」に頼るのではなく、その場で検索できるようになったのです。そこで電通が2004年に提唱したのが「AISAS(アイサス)モデル」です。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Share(共有)
消費者は広告で気になった商品をまず検索し、比較サイトや口コミをチェックします。購入後はSNSやレビューサイトで感想を共有する。この流れがAISASです。特に「Search(検索)」と「Share(共有)」はデジタル時代の購買行動に欠かせない要素となりました。
モデルをどう広告に活かすか?
この2つのモデルを理解することで、広告設計は格段に戦略的になります。たとえば、オンライン広告を設計する場合、単に「注意を引く」だけでは不十分です。その後の「検索行動」に備えて、公式サイトや商品ページを整備し、比較されても選ばれる要素を提示する必要があります。さらに購入後にはレビュー依頼やSNSでのシェアを促す仕掛けを入れることで、次の消費者に波及していくのです。
AIDMAとAISASの違い
- AIDMAは「広告を見てから購入するまでの心理の流れ」を説明する オフライン中心のモデル。
- AISASは「ネット検索と情報共有が前提」になっている デジタル時代のモデル。
現代の消費者は、AIDMA的に衝動買いをすることもあれば、AISAS的に検索と共有を経て慎重に購入することもあります。両方を理解して使い分けることが、広告設計のカギとなります。
まとめ
購買行動モデルは、消費者の心理を客観的に理解するためのフレームワークです。AIDMAは古典的でありながら今でも有効な視点を提供し、AISASはデジタル社会に適応した行動パターンを示しています。広告やマーケティングを考えるときは「人はどのような流れで商品を選ぶのか?」を常に意識することが大切です。
👉 学びのポイント
- AIDMAは「注意→興味→欲求→記憶→行動」の古典的モデル
- AISASは「注意→興味→検索→行動→共有」のデジタル時代のモデル
- 広告はこの流れを意識することで、より効果的に設計できる
📖 参考:
- 電通「AISASモデル」公式発表資料
- Roland Hall, “Retail Advertising and Selling” (1924)