AIでなくならない仕事
Day9:コーチング・メンター ― 人を導く力

はじめに
AIが膨大な情報を整理し、効率よくアドバイスを与えることは可能になりました。しかし「人を導く」という行為は、単なる知識の伝達ではなく、相手の可能性を引き出し、成長をサポートすることに本質があります。コーチングやメンタリングは、その意味でAIに代替されにくい仕事のひとつです。
コーチングとメンタリングの違い
- コーチング:相手が自ら答えを見つけられるように質問を投げかけ、成長を促すプロセス。
- メンタリング:経験豊富な先輩や指導者が、自身の知識や体験をもとに助言し、後輩や部下を導く関わり。
どちらも「相手の立場や状況を理解する力」が不可欠であり、これはAIが苦手とする領域です。
AIにはできない「人を導く力」
AIは正解の選択肢を提示することは得意ですが、相手の気持ちを汲み取り「今のあなたに必要なのは励ましなのか、厳しさなのか」を判断することはできません。コーチやメンターは、相手の性格や置かれた環境を踏まえて柔軟に対応し、その人に合った成長の道を描きます。
また、成功や失敗を共に経験し、そこから学びを共有するプロセスもAIには再現できません。「一緒に乗り越えた」という実感が信頼関係を強化し、指導の効果を高めるのです。
コーチ・メンターが活躍する場面
- 企業の人材育成
部下の成長を支え、組織の力を引き出す。 - スポーツの指導
技術だけでなく、メンタル面のサポートが勝敗を左右する。 - 起業家支援
経験豊富なメンターが、次世代の挑戦を後押しする。 - キャリア形成
進路や転職に迷う人にとって、人生の方向性を一緒に考える存在。
これらは「信頼」と「人間的な洞察力」が欠かせない分野です。
導く力を磨くには
人を導く力は、一朝一夕に身につくものではありません。
- 傾聴を徹底する:相手の話を遮らず、深く理解する。
- フィードバックを具体的に伝える:曖昧なアドバイスではなく行動につながる指摘を行う。
- 経験を共有する:自分の失敗や学びを正直に伝えることで、相手に安心感を与える。
これらの積み重ねが、信頼できる指導者をつくります。
まとめ
コーチングやメンタリングは、単なる知識の提供ではなく「人の成長に寄り添い、可能性を引き出す」仕事です。AIには真似できない共感と柔軟な判断が必要とされるため、今後も高い価値を持ち続けるでしょう。
次回は「Day10:営業職 ― 『人から買いたい』と思わせる存在」を取り上げます。
出典
- Whitmore, John. Coaching for Performance (Nicholas Brealey Publishing, 2017)
- 厚生労働省「キャリア形成支援におけるメンター制度の活用」(2019年)